創作童話 エマと狼 総集編

こんばんは。
エマと狼総集編です。
どうぞごゆるりと読んでやってください🎀🐺


あるところに、エマという名前の可愛い女の子がいました。

ある日エマは、病気のおばあさんの所へお見舞いに行きました。

バスケットを下げて、森の中を行くと、狼に会いました。

狼はエマにこう言いました。

「こんにちは、エマ。

 おばあさんの御見舞に行くんだね?

 けれど、君はお花を持っていかないのかい?

 この近くに、綺麗なお花畑があるんだ。

 ついておいで。」

森を抜けるとそこには目を見張るようなきれいなお花畑がありました。

エマは狼にお礼を言うと夢中でお花を摘みました。

そして、可愛いブーケと王冠を作りました。

ブーケはおばあさんにあげるため、王冠は狼にあげるため。

狼は言いました。

「ありがとう、エマ。1つお願いがあります。

 そのバスケットの中のワインを1本だけくれませ
 んか?」

エマは快く2本あるワインのうち、1本を狼にあげました。

狼はエマと別れてから森の中の罠にワインをかけて回りました。

狩人が仕掛けていったものです。

 そして次の日も、そのまた次の日も、狼はエマからワインをもらい、罠にかけることを繰り返しました。

月日が経つと、罠は錆びれて壊れていきました。

 エマと狼は毎日のように森で会い、お花畑でおしゃべりしました。

エマはたくさんのことを狼に話しました。

自分のこと、粉挽き屋を営む両親のこと、お菓子作りが上手なおばあさんの事。

2人ともよほどお互いを気に入ったのでしょう。

この日課はおばあさんが亡くなってからも続きました。

その日も2人はいつものように、お花畑でおしゃべりしていました。

狼は言いました。
「エマ、エマ、君と出会ってからたくさんの時間が経ちました。私はもうすぐ死んでしまうよ。」

その言葉を聞くエマも、すっかり大人の女性になっていました。

狼は続けます。

「1つお願いがあります。私が死んだら、その亡骸
 を君の家の庭に埋めてくれませんか?」

そう言うと狼は死んでしまいました。

エマは狼の願い通り、庭に狼を埋めました。

次の日、不思議なことが起こりました。

昨日狼を埋めた場所から、大きな木が生えていたのです。

その木は不思議な木でした。

1本の木に、たくさんの種類の実がなるのです。

馴染み深いりんごやプラムもあれば、見たことのないような果物までありました。

さっそくエマは、果物を摘んで、パイを作りました。

そのパイの美味しかったこと!

エマは村中の人たちに、それを配りました。

みんなそれを喜んで食べてくれました。

ある日、お城からパーティの招待状が届きました。

この国の王子が、結婚相手を探しているそうです。

そこでエマはおめかしをして、いそいそとお城へ出かけました。

お城についたエマが夢中になったのは、ハンサムな王子様でも、美しい骨董品でもなく、たくさんのお菓子でした。

テーブルには見たことのないお菓子がたくさん並んでいます。

パイ、ケーキ、タルトにプディング。。。

エマはそれを少しずつ、全部の種類を食べました。

エマの心の中で、狼の「やれやれ、年頃の女の子が。。」という声が聞こえた気がしましたが、気にしないことにしました。

家に帰ってからもエマはお城で食べたお菓子を真似しました。

それができるようになるとたくさんのアレンジを加えて、自分で考えたお菓子を作るようになりました。

たくさん失敗もしましたが、たくさんの果物を使って、色々な種類のお菓子を作れるようになりました。

エマの作ったお菓子は、たちまち村中に評判が広まり、お店を出すまでになりました。

その評判が、今度は国中に広まり、王子様と婚約者様のウエディングケーキの注文を直々に頼まれるほどでした。

 この注文を受けると、エマは俄然張り切りました。

なぜならお菓子作りが上達したのもお城のパーティでたくさんお菓子を食べることができたからですもの。

エマは考えました。
「どうしたらお二人共に喜んでもらえるケーキが作れるかしら?」

考えるうち、エマはふとあることを思い出しました。

婚約者様の髪飾りと、靴のベルトのところに、可愛いすみれの飾りがついていたことを。

そこでエマはお花屋さんに行きました。

「いらっしゃいませ、いかがなさいますか?」

エマがお花屋さんに行くと、店番のお兄さんに声をかけられました。

「スミレをいただけますか?できるだけ沢山。」

「スミレなら沢山ありますよ。」

聞けば、最近王子様がスミレ好きな婚約者様によく花束をプレゼントするそう。
なので多めに仕入れているのだとか。

「やっぱり婚約者様はスミレが好きだったんだ!」

予想があたってエマはウキウキが止まりません。

エマはお花屋さんに相談し、ケーキの飾りにできそうななるべく大きなスミレを沢山買いました。

これだけあれば、どれだけ素敵なケーキができるでしょう。

式の当日、エマが出したのは、こんなケーキでした。

大きな3段ケーキに、真っ白いクリームが塗ってあり、すみれの花の砂糖漬けがお行儀よく並んでいます。

ケーキの中にはあの不思議な木から取れた果物がたくさん入っています。

これを見て集まった人たちは大喜びし、食べるとみんなが踊りだしました。

中でも一番喜んでくれたのは、王子様とその結婚相手でした。

そしてこの2人は、子供が生まれたときや、何かおめでたいことがあったとき、必ずエマにお祝いのケーキを注文しました。

そうして、この2人は末永く暮らしましたとさ。

え?エマはどうだったかって?

もちろん、彼女も幸せに暮らしていますよ。

最近の彼女のお気に入りの時間はね。。

庭の大きな木の下で、よく手入れされたすみれの花壇を眺めながら、綿帽子みたいになった頭を2つ並べて、ゆっくりケーキを食べること、ですってさ。